2005年11月30日

**彼岸への道程のトランジット〈 ヴィタール 〉**

 ようやくのこと、塚本晋也監督の〈 ヴィタール 〉を観る。

 今までの作品群も説明しにくい解りにくい映画達だったが、こいつもまたなんだか解らなかった。というか、今までの中で、 最強の作品だった。

 恋人"涼子"とドライブ中に事故に会った博史は、一命こそ取り留めたが、両親の記憶さえ失い、 自分が何者であるかすらも失ってしまった。何もかも失ってしまった博史ではあったが、解剖学の本には興味を示し、医学部に入学する。 2年自生の解剖実習のとき、博史の前に若い女性の御遺体があった。その御遺体の解剖をするうちに、博史は現世とは違った世界に埋没し、 とある女性"涼子"との逢瀬を繰り返すことになる。博史はあっちの世界に行って、かつての恋人と逢瀬を続けるうちに、段々とこっち(現世) の記憶も取り戻していくのであった。

 抜け殻のようになった男の精神と既に抜けてしまった女の精神が、三途の河の手前の乗り継ぎ所で、デートを重ねてるなんて、解るかい、 そんなもん!でなんで、その場所が沖縄なの?楽園のイメージなん。ボクはどっちかっていうと、コンスタンティン的あの世観 (あの世もこの世もパラレルワールド的に同じ空間に存在しているという世界観)に賛同しているので、パラダイスなんて発想より、 妙に人の乏しい街中で会っている方がしっくりくるんだよね。これは蛇足。

 今まで執拗に生身の肉体を撮り続けてきた塚本監督が、精神世界に乗り出してしまった。侵食される肉体、生の喜び、性の輝き、 そんなテーマだった人が、精神世界と撮ったらどうなるのか?いや相変わらず、さすがは舞台出のひと、肉体の躍動は見せるよ。涼子役は、 バレリーナの柄本奈美(草刈民代の後輩筋だって)だもん。ダンスシーンには躍動感が溢れ出す。が、心持ちその肉体は透明度50%な感じで、 向こうが透けて見えそうだ。「生きてる・フォーー! 」なレイザー・ラモンばりの活力は感じられない。そんでもって博史役の浅野忠信は、 ギャランドゥから胸まで続く体毛を惜しげも無く曝すワイルド路線だが、それはあくまであっちの世界のみ。 現世では生きてんだか死んでんだか解らないような生気のなさに終始する。現世で事実死んだ女と魂の抜け落ちた男が、 踊り場で会い続けるうちに、お互いの向かう場所に戻っていくのって、四ツ谷怪談じゃないの、これって。結末は大違いだけども。

 まあ、いずれにせよ、解ったことが一つだけ。ボクはどんなに美しい精神よりも多少歪んでたって肉体の方が好きなようだ。 命あってのものだね。嫌いじゃないが2度観たいとは思わなかった。肉体の躍動・カモーン!

posted by 森と海 at 22:37 | Comment(4) | TrackBack(2) | Movie(邦)
この記事へのコメント
観てないんでなんともあれなんだけど塚本監督って結構そっちの方も前から興味があったんじゃないのかな?肉体を撮り続けてやがてそっち側にいっちゃったという(^^;実は押井監督も初期から考えるとそっちの方へ行きかけたけどなんかマトリクスの裂け目で留まっているところがあって割りと映像作家の人は一つのアガリとしてそういうものを捉えているのかもと推測してみたり。
Posted by tonbori at 2005年12月01日 01:09
どうなんだろ?
肉体への拘りは充分感じられるんだけど。
それはそうと、この医学部ならボクも通いたい。教授陣がやたらと豪華なのだ。
Posted by 森と海 at 2005年12月01日 23:52
私も観ておらんので何だが、「精神だけ」ってのがどうもってのはわかるわ(藁)。
しかし、舞台出身者は「体」で芝居するんだってのが弁えてるよね。つか、芝居ってのは「空間」使うんだってのが。
そいと「四ツ谷怪談」でなくて「四月怪談」でねっかい? 私の勘違いならごめん。
Posted by acoyo at 2005年12月02日 11:43
〈 四月怪談 〉なる映画は未見なれど、goo映画でしかりあらすじチェックしたよ。
うんにゃ、やっぱり「四谷怪談」だよ、さっぱりしているように見せて、その実情念が篭りまっくっているもの〈 ヴィタール 〉は。
Posted by 森と海 at 2005年12月02日 23:47
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