2005年12月05日

**プロのお仕事だね〈 十萬火急 / LIFELINE 〉**

 「愛すべき映画たち」 さんには先を越されたが、これだけは言っとく。今月号の秘宝のトー特集を読む前に、発注してたんだからね。誰に言い訳しているんだか・・・ (苦笑)。

 とい言うことで、1991年〈 バックドラフト 〉・1997年〈 十萬火急 / LIFELINE 〉・2004年 〈炎のメモリアル 〉と続くファイアーマン賛歌の1つ、ディレクターはもちろん我らが父さん(ジョニー・トー)でございます。 でもジャケットにはパトリック・ヤウもクレジットされてんだよね、本編には父さん一人、ん、ヤウの修行なの?

 プロのお仕事を描かせると父さんてば、非常に上手いのだ。この作品で言えば、メインキャスト以外を写すカメラは、 火災現場の周りの様子をさらっと写し込む。そのほんの数秒のカットで、現場の緊張感や混乱を観客に伝えると同時に、 あたかも実際に起こった事故だと思わせるリアリティーを芳香させる。思えば、最近の作品においてもそうなのだ。 実際にはとんでもなくありえないような事件事故を、目の前で起こっていることかのように見せてくれる。実際、冷静になって考えると、 殆どありえないようなことも多いのだけれど、そこはそれ、騙された者が勝ちなのだから・・・(笑)。

 さて、消防署の隊員の話である。重要キャラは4人。当然一人一人は人間であるからして、性格も違うし、 いったん仕事を離れれば私の生活もある。 らうちん扮するBOSSは現場主義の上にへつらわない性格が災いして昇進から見放されている。 部下には慕われるが上からは睨まれる、そんな不器用なリーダーである。 そのらうちんの下に配属された養成学校を出たばかりのひよっこがレイモンド・ ウォン。こいつがドン臭くって、登り棒さえ降りれない。ほんとに卒業したの?って感じだが、 らうちんに背中を無理やり押されて出来る様になる。はたまたここの消防署には女性消防官もいる。 しかも署ではNo.2の位置(ということは皆からマダムと呼ばれるのよ)。そんなマダムな消防官にルビー・ ウォン。彼女は結婚しているが、仕事を優先するあまり妊娠を避けようとしている。そんなカミサンにダンナはオカンムリ。 いや、基本的にはアツアツです。そこに新しい署長が赴任する。お堅いタイプのその署長がアレックス・ フォン。規則遵守・安全第一の署長と「現場じゃそんなこと言ってらんねーぜ!」 ならうちんは対立ムード。 そこにらうちんの恋愛話も絡まって複雑化の一途を辿る人間模様は、 ラストステージの紡糸工場火災現場に雪崩れ込む。

 この紡糸工場火災現場の炎の演出がすさまじい。それこそ〈 バックドラフト 〉 は炎が意思を持つかのようにボォーっと飛び出してきたかと思ったら、スーっと引いてゆく様を描いて、火と言う特殊効果を見せてくれた。予算・ 技術的には比べ様も無い香港映画人たちはやってくれた。「スタントこそ我が真髄」とばかりに、 人が炎に包まれまくっている。噴出した炎に包まれるならまだしも、炎の中から歩いて生還するショットなんて、ほんとに演じたのかいな? 今ならなには無くともCGでって風潮だが、この頃にはそんなことしてないよな?そして、父さんは一つのありえない設定を突きつけてくる。 火が音に反応して追いかけてくる! んな、アホな?〈 バックドラフト 〉では、火を擬人化したが、ここでは怪物化。折りしも、 火災現場が大きくて入り組んだ工場のため、煙に巻かれた姿はさしずめ、ダンジョンを彷徨うかのよう。RPGだよ、こりゃ。 ダンジョンを彷徨い脱出口を探して彷徨するらうちんらは、互いの対立を越えて認め合う関係に変わっていく。 互いの性格正反対に違っていても、やれる奴はやる奴を認めるんだよな。ううう、身震いするぜ。
lifeline

 苦労の末に、ドロドロになりながら無事生還した隊員たちは、体を洗い、飲み物を飲み、タバコを喫って、しばしの休息。しかし、 火事はまだ沈下していない。指令が掛かると再び装備を背負って、現場に向かっていく。

 クゥーーーッ、なんともプロフェッショナル!

 改めて確認してみると、ラストこそ違うが、それぞれの生活を絡めつつ、その道のプロのお仕事を描くことって、〈デッドポイント / 非常突然 〉となんら変わりがない。父さんの映画って、その道のプロを、茶化さず正確かつ真摯に描くからこそ、香港消防處や警察公共關係科 (PPRB)の協力が得られるのだろう。時々、んなアホなって描き方するけど、そこは免罪符があるんだろうか?

 画面はちょっと古臭いし、ハッとするような構図は今ほど多くはないが、紛れも無く父さん印の映画だった。これ、日本未公開らしいね。 当時としては出演が地味だからかもしれないが、いずれビデオスルーがあるような気がする。

 

posted by 森と海 at 00:51 | Comment(3) | TrackBack(3) | Johnnie To
この記事へのコメント
micchiiさんとこでもコメ書いたけどまさに燃える映画のようですなあ。最近の父さん映画結構ビデオスルーされているので出たら嬉しいなあ。
Posted by tonbori at 2005年12月06日 01:48
こんにちは、TBありがとうございました。
エントリー凄く詳しいですね!
いまいちあやふやだったところもきちんと書かれており、よりこの映画のことがよくわかりました。ありがとうございます。

>クゥーーーッ、なんともプロフェッショナル!

まさしくその一言に尽きますね。

先ほど気づいたんですが、リンクしていただいてありがとうございます。
こちらからもリンクさせていただきました。
今後とも宜しくお願い致します。
Posted by micchii at 2005年12月06日 12:21
>tonbori堂サマ
密かに、ジョニー・トー・ブームは始まってますよって、〈 黒社会 〉もしくは〈 放逐 〉の成績如何では、ジョニー・トーBOXなんてものが発売されるかも?!
>micchiiサマ
なにせ、ボクは"にわか"なもので、殆どの作品をyesasiaに頼っておりまする。観たの、ここ一年ぐらいだもの。よって、文法は鍛えられました、トー文法ならびに英文法。
Posted by 森と海 at 2005年12月06日 22:19
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのTrackBack URL
http://blog.seesaa.jp/tb/10212296

『十萬火急』
Excerpt: 十萬火急(1996/香港) 【監督】ジョニー・トー/パトリック・ヤウ 【出演】ラウ・チンワン/アレックス・フォン/レイモンド・ウォン ジョニー・トー第23弾。 ジョニー・トー版『
Weblog: 愛すべき映画たち
Tracked: 2005-12-06 12:17

『十萬火急』役柄チェック21
Excerpt: 監督:杜[王其]峰(ジョニー・トー) 製作:方逸華(モナ・フォン) 脚本:遊乃海 大都會電影製作有限公司 1996年 前回に引き続きラウちんエントリーです。2月4日の『忘れえぬ想い』公..
Weblog: Driftingclouds
Tracked: 2006-01-13 01:42

消防演習がありました〜
Excerpt:  こんにちは。  普段あまり外で行動することがないためアウトドアでの活動をしていると消耗がはげしい副部長のべえです・・・だいたい3時間くらい外にいると眠たくなってきます ...
Weblog: たかす地域情報
Tracked: 2011-07-01 12:43
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。