2005年12月30日

**ベトナムの高地で厭戦をさけぶ〈 ハンバーガー・ヒル 〉**

 この作品87年製作で、もっと言うと〈 プラトーン 〉が86年製作、〈 フルメタル・ジャケット 〉 も同じく87年製作という80年代後半は空前のベトナム戦争映画のラッシュであった。 そのすべてを公開時に観ているっていうボクは何者だろう?

 当時としては、激しい戦闘シーンを無名な役者を使って思いっきり撮りまくった作品として、小僧のボクをビビらせたものだったんだが、 さてン十年ぶりに見直してみたぞォー。

 

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 以外や以外、無名とばっかり思っていた役者さんの中に、 どこか寂しい視線のアフリカ系アメリカ人を発見した。今や日本で、映画通と呼ばれる人々に一番嘱望されていた役者さんだ。 ドン・ チードルさんが、都合日本初お目見えの作品でっせ。上の画像の3人の一番左がそう。なんだ、この頃からオイシイ役を掻っ攫ってたんだな。

 で、戦闘シーンは今見ても圧巻の激しさ。当時の特殊効果の出来からして、現代の残酷描写には若干劣るが、 それでも眠気が吹っ飛ぶようなけたたましさ。誰かが言っててけど、〈 セイビング・プライベート・ライアン 〉にも迫る勢い。音響的にも、 不利な点があろうかと思うが、それをペラっとひっくり返す臨場感がたまらない。拾わなくてもいい兵装の擦れる音まで入っているんだもの。 アサルトライフル(M-16)を撃つだけでも、マガジンチェンジして、コッキングして連射して、それでも当たってないのが丸分かり。 そういう意味でかなりリアル。

 そういった10日間に及ぶ”937高地”特攻の部分はいいとして、 その合間合間に挿入されるつかの間の休息部分はいただけない。もちろんこの時期に、ベトナムものの映画が数多く撮られた背景には、 ようやく冷静に「ベトナム戦争はアメリカにとってなんだったのか?」 ということを内省的に見つめ直すことが出来るだけの社会的コンセンサスが固まったということもあろう。だからこの時期のベトナム戦争ものは、 すべからく戦争の「狂気」を扱ってきた。それは、ぱっと見内輪揉めのオリバー・ストーンの作品さえ、例外ではなかった。描くことは1つ、 あとはどう描くか、どうアイキャッチするか?

 本作品、アイキャッチの部分は概ね成功。当時としては熾烈なほどの部隊消耗率で他を抜きん出た。問題は、 その間に挟まれた前線の兵士たちに襲い掛かる本国からの反戦ムーブメントの余波。それを、 兵士へ届く手紙などの形で繰り返し繰り返し反芻する。そりゃいくらバーンズ軍曹(プラトーンの軍曹) ぐらいイケイケな兵士でもヘコミまくるよ実際。ここまで徹底すれば、誰だって嫌になる。兵士に当てた手紙の中で恋人から 「もう手紙は書きません。肯定することになるから」なんてこと書かれた日にゃ、居たたまれませんわ。本国ではそうでも、 兵士たちは現実に死線をくぐってるんですから。

 なんというかね、ここまでストレートに厭戦を訴えるのも観ててしんどくない? ボクは観てないのだけれども、「カップルの片方が亡くなってしまう」ような匕首突きつけて感動せよって強要する某邦画に似て、 芸がないと思うのよ。「こんなに兵士たちの置かれた立場は悲惨だったんです」っていわれても、 実際にそうであったにせよそれがあんたの言いたいことなのかとジョン・アーヴィンに問いたい。もちろんボクが天邪鬼な偏屈者というのは、 百も承知だが、「ベトナムいや戦争って酷いのよ」って、別な言い方をしている映画も数多くあると思う。 ドキュメンタリー畑からやってきたアーヴィンには、ストレートな語り口しかこの局面では打つ手が無かったのかもしれないけれども。 でもあんた、〈 戦争の犬たち 〉さえも残してるんですから、もうちょっとどうにかなったんじゃないの。

 ボクとしては、屈折していてもいいから戦争の狂気・ 不毛をぐるっと回ってあさっての方角から描くほうが好みだ。〈フルメタル・ジャケット 〉や〈 スターシップ・トゥルーパーズ 〉のような。

 

 

posted by 森と海 at 00:05 | Comment(4) | TrackBack(1) | Movie(米)
この記事へのコメント
いま考えるとこの映画と「ブラックホークダウン」て合わせ鏡みたいなものやなと。
とくに来た者をミンチにするとまでいわれたハンバーガーヒルの戦闘とアメリカの精鋭部隊が押し寄せる民兵に囲まれるという状況の違いこそあれなんかそう感じる。
Posted by tonbori at 2005年12月31日 00:09
そやねぇー。ただし、< ブラックホーク・ダウン >が戦闘戦闘の積み重ねに対し、< ハンバーガー〜 >は反戦の意見が迫ってますよって安易な感情操作を行なっていてイヤーンな感じ。どっちが上って世間の評価通りだと思うんですよ。
Posted by 森と海 at 2005年12月31日 20:11
新年あけましておめでとうございます。
吾輩も「プラトーン」「ハンバーガー・ヒル」
「フルメタル・ジャケット」全部リアルタイムで
観ました(笑)。個人的には「ハンバーガー・ヒル」が一番恐かったですね。はい、ただ“恐かった”です…(苦笑)。
あ、今年もよろしくです!
Posted by mori2 at 2006年01月02日 00:24
>mori2サマ
アノ頃、ベトナム物が異常に多かったですものね。すべては、キューブリックのせいなのかも知れません。撮影開始が早かった分だけ。
今年もよろしくでございます。
Posted by 森と海 at 2006年01月05日 22:54
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『ハンバーガー・ヒル』
Excerpt: TSUTAYAで探し物が見つからない…。なので昔観て気に入ってた『ハンバーガー・ヒル』を借りてきた。そしてやっぱり面白かったので、これから(今までほぼ未開拓だった)戦争映画をちょくちょく借りていこうと..
Weblog: HELLOGOODBYE
Tracked: 2007-05-21 20:32
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