2009年02月22日

**黒澤版と森田版を比較〈椿三十郎〉**

 えーと、説明不要〈椿三十郎〉です。言わずもがな、黒澤娯楽時代劇の最高峰。可笑しいという面においてトップという意味ですよ。

 そんな作品をリメイクした森田芳光監督に対しては、人によっては無謀だとか思ったり思わなかったり・・・。

 脚本は冒頭のスタッフロール通り、黒澤明・菊島隆三・小国英雄三人のオリジナル脚本を採用。黒澤版を見倒した御仁なら、まったくストレスのない耳なじみな台詞が続きます。ということは、同じくリメイク物であった〈隠し砦の三悪人〉のような「なんじゃこりゃ〜?」感のないものということです。黒澤版信奉者にも納得頂ける一品かと。

 さて恒例となりました画像を交えての比較に参りましょうか。

 岡目八目!イマドキ使えませんよこの言葉は。ボクだって思わずググルさんに聞いてみましたもの。脚本をそのまま使っているんでそのままなんですね。ブラッドパックな役者さんたちは解っていて演技しているんでしょうかねー?それはそうと、三船敏郎に当て書きされた台詞回しを、織田裕二さんは見事に自分なりの言葉に消化してますねえ。さすがです。

 間抜けな青侍の面々が床下から顔を出すの図。ひょっとして位置関係まで合わせていたのではと思って比較してみたけど、・・・並びは違いますね。

 ああ、やっぱり並びは違うや。さすがにフルコピーではない様子。モチロン本質的な意味では、順番なんて関係ないですからね。

 さてさて悪人そろい踏み。注目は、目の下のクマの印象的な竹林役の風間杜夫さんと上唇のホクロが違和感のある黒藤役の小林稔侍さん。なんか変なメイクなんですが、これはそれぞれ藤原釜足さんと志村喬さんを意識してのメイクでしょうね。

 青侍のモブシーンを見ていると誰でも気付くことですが、保川役の一太郎さんがやたらと唇をとんがらせます。田中邦衛さんのモノマネなんでしょうが、はっきり言ってやりすぎです(笑。でも監督の指示があろうがなかろうがOKテイクなんで、監督の意図なんでしょう。まあなんにしても一太郎さん的には、あの田中邦衛の役ということで天にも昇る心地だったでしょう。久蔵役を頂いたジェームズ・コバーンのように(荒野の七人でさも本当のコトのように吹聴されている噂話)。

 構図からしてマンマです。森田版では室戸が自分の杯に注ぐとき畳に溢してますから、ひょっとして黒澤版もか?と注意してみましたが確認できず。それはそうと、甲高い声というイメージがある豊川悦司さんが妙に喉絞った低音で喋っているという風に感じます。バットマスクを被ったクリスチャン・ベールのごとく。「これがウイスキーだ。抱擁の年代、エンブレム。」の仲代達矢さんの演じた役だからなのか?

 ここ(母娘ののんびりした会話)どうするのかと思ったら、同じようにのの字でした。ほかにやりようがないですね(笑。

 城代家老睦田役は選考が難しかっただろうと推測されます。見た目昼行灯でなきゃいけないけど実は切れ者、しかも伊藤雄之助さんに当て書きされた脚本通りにするには馬面でなきゃならぬ。たいへんですがスタッフは見つけてキマシタよ、条件通りの役者藤田まことさんを。さすがに既にカラーの確立された藤田まことさんは、伊藤雄之助さんのとぼけた喋り方こそしませんけど。言い忘れましたがtonboriさんには不評だった睦田奥方役中村玉緒さんの間延びした喋りですが、入江たか子さんのイイトコの奥方様演技(というか入江たか子さんの場合はほんとにイイトコの出なんで素か?)を参考にしているんでしょう。それにしても、華族の出と歌舞伎役者の出ということで、2人とも凄いなあ。

 んでお待ちかねのココ。ここはしょうがないでしょ。黒澤版のように盛大に血を噴出させちゃったら否応なくレーティング上がっちゃいますよ。PG-12でも付いた日には、青侍目当ての女子中学生は友達同士で見ることはかなわず、おとーさんと一緒ということになります。イマドキのおとーさんは、〈椿三十郎〉なんて興味のない人が大半ですから、興行成績に影響いたしますです。血出せないかわりといっちゃあなんですが、森田監督はこの場面は影響力が大きいので、凄みの演出として鍔迫り合いから見せました。でもスローは蛇足だと思います。

 殺陣についてはもう一つ言っとかなくちゃなりません。室戸役宅での「とんだ殺生」の場面。黒澤版では流して見ちゃうと、斬られ役が斬られに行っちゃうわ三船さんが格好良くはないわで印象に残らないのですが、カット数を数えると驚愕します。20数名を斬る場面に費やされるカット数はなんと2カット!黒澤監督にして「あんな殺陣の出来るのは三船だけだ」とおっしゃったとか。ですから、あの最後に刀を納めるときの荒い呼吸は本息なんです。さすがに織田さんにそれを求めるのは無理と森田監督は判断したのでしょう。カット数は増やして、転がったり息が上がったりという演出をしてリアルっぽさで勝負しています。ラストの1対1もそう、殺陣の基本方針はリアルっぽさですね。




 近年、大船調時代劇とでも言いますか(ぜんぜん言い当て妙になってないなあ)、人情物っぽい時代劇が3本ほど当たりました。東映のような本格的時代劇は今は難しそうですが、笑いとペーソス溢れる時代劇なら当たる素地はあると推察できるんですね。そうなると東宝娯楽時代劇の中、特に黒澤作品の中では、〈用心棒〉よりは〈椿三十郎〉となっちゃう訳です。そういうマーケティングなのか、ただ単に森田芳光監督がしたかったのか、そこいら辺の事情はわかりませんけど、もっと話題に上ってもいい作品だと思います。ガス・バン・サントの〈サイコ〉の評価を見ても、忠実なリメイクってケチョンケチョンにこき下ろされることが常のようですが、画家を見て御覧なさい。修行時代はまず模写から始まるんですから。時代劇の演出初でココまでまとめたんだから御の字です。

 でもファンはこれ見たかったんでしょうねえ。






posted by 森と海 at 22:40 | Comment(4) | TrackBack(0) | Movie(邦)
この記事へのコメント
不評だったtonboriです(笑)
うーんでもやっぱり最後のシーンはドバーってやって欲しかったなあ。
仰るとおりの営業の要求としても(苦笑)
大体からして今時時代劇を観に来る人ってもうオサーン限定にしても多分いいんじゃないのとも思うし(言いすぎ?)
Posted by tonbori at 2009年02月26日 01:34
あっ、どもども、本文中では失礼しちゃいました。

若き日に映画館に通った記憶のあるオサーンも今では縁遠くなつつあり、ワケーヤツラはそもそもそういう習慣がなく、あまつさえ映画文法さえ理解出来なくなっている昨今、若い役者やスマ起用するのは裾野の拡大に躍起になっているから。

とかなんとかイワセナーイ!
Posted by 森と海 at 2009年02月26日 21:32
織田さんは三船敏郎さんの役をやるんじゃ荷が重いですよね。どうしても比べちゃいますよ。
豊川悦司さんはなかなか好演だった気がします。
Posted by samurai-kyousuke at 2009年02月27日 00:09
>samurai-kyousuke様
織田さんも三船さんも、演じた頃の実年齢はアラ4だったらしいですよ。昔の人は老成してますよね(わが身振り返っても)。
最近トヨエツと江角マキコの区別が付きません。
Posted by 森と海 at 2009年02月28日 20:56
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