2006年01月31日

**テーマが二枚舌だろ?〈 宇宙戦争 〉**

 スティーブン・スピルバーグという人は、幾度となくSF物を撮り、その度に失望させてくれる。この人には、 SF的世界を構築する想像力がないのじゃないか、とか、取っ掛かりは冴えてるが詰めはいつも甘々とか感じてしまう。そんなこんなで、 劇場でかかった時には「ケッ!」とシカトしてしまったが、映画秘宝を読むとベタボメじゃないっすか! (tonbori堂さん『宇宙戦争』短評 も同様な経緯らしいのだ。)

 という訳で、いまさらながら観てみたら・・・。

 コレ、スゴクナイ?

 雷が落ちた地点を中心に、地下で何かが動き始める。不規則に盛り上がるアスファルト。 地割れが延びて建物破壊。地盤陥没。やがて地中より現れる何か。 ついに何かは、その巨大な姿を表す。呆気にとられて立ち尽くす人々。 何かが建物を破壊、触手より光線を発する。明らかな敵意を感じ取って逃げ惑う人々。 何かは無差別殺戮を開始。

 何かには、当然トライポッドが入るのだけれど、 ここにバラゴンが入っても全然おかしくはない。同様に、ハドソン河から現れて、 フェリーを伺う何かには、ガイラが入っても以下略。まさしく怪獣 (正確には巨大怪物)映画。神は自らを模して人を創りたもうた。人は自らを模して木偶を創りたもうた。 宇宙人は自らを模してトライポッドを創りたもうた。ということで、『トライポッドの形がイヤーん、タコイカ怪獣』と云わないように。 ゲソラというよりはキングジョーと呼んでほしい(意味不明)。これは想像だけど、あの光線でやられた人って蒸発するじゃない。あれ本当は、 ズバッと切れた体が血飛沫撒き散らしながら舞うというような形にしたかったんじゃないのかな。しかしそうするとレイティングが上がるから、 泣く泣く変更したと。変わりに植物への水やりの部分に血飛沫持ってまいりましたここならOKでしょレイト。そう考えると、初登場のシーンはまさしく阿鼻驚嘆の地獄絵図。

 ということで裏テーマのほうは、「巨大怪物の破壊絵図」と勝手に決めつけとく。 そんじゃ表テーマは?ここ200年ばかり、本土を焦土化する経験を積めなかったアメリカが、 圧倒的武力の差を思い知らされるほどの侵略を受けた場合、 こんな風に国民は敗走せにゃならんとですとばかりにただただとぼとぼとハイウエイを歩く絵は、スピ曰く、「戦争って画面で見てるのとは全然違うのだよ」 と言ってそうな言ってなさそうな、そんなものが見えてくる。同時に「自分・家族のためなら、他の犠牲はやむを得ない」という、” わが身は自分で守る銃社会”を皮肉るかのような見たくもないエピソードが目白押し。”「車を譲れ」と銃で脅すものは久しからずや、 自らが銃の標的に”って、ここら辺がスピの性格の悪さが露呈する。〈 ディープ・インパクト 〉なら「この子だけでも連れてって」 とバイクに懇願するのだよ。ミミとスピは正反対。ミミは理想主義者で、スピは現実主義者。どちらがリアルかって言えば、もちろんスピの方なのだけれども。

 そしてまた観たくもないのがティム・ロビンスの出ている部分なのだけど、観たい観たくないの以前に、ここでリズムが死んでないかい? せっかくの怒涛ごとく進めた話が、あの地下室で大ブレーキ。SW EP1のジャージャー・ビンクスくらい要らないと思う。 どうしても入れるって言うのなら(やっぱり評論家対策の重いテーマは必要なのだろう)、せっかくエイリアンとお近づきになるのだ、 こんなんはどうだ?エイリアンと人間の格闘、直に接触、皮膚感染、エイリアン日和見感染症拡がる。 または、トム様とエイリアン格闘、トム様掘られる(爆)、粘膜感染(核爆)以下略。ダメだダメだ、ボクの想像力もたかが知れてる(笑)。

 いずれにせよ、怪獣映画って言うのは本当だった。トンでもな相手にはトンでも兵器で対抗というのが東宝スタンダードなのだけれども、 さすがにそれは出来なかったようだ。通常兵器では刃が立たないからといって、B兵器に頼る姿には、 オリジナルからそのまま持ってきただけの結末とはいえ、エスカレートする兵器開発競争を皮肉ってるんじゃないのと邪推の一つもしてみたくなる。 さすがはスピ、人が悪い(注:ホメ言葉です)。ボクにとっては1時間半以内に収まってくれれば最強の映画だった。

 

 

 ちょっと小耳にはさんだ情報、ダコタ・ファニングってエミリー・ワトソンと姉妹らしい。もちろん姉がダコタ(嘘爆)。

 

 

posted by 森と海 at 22:28 | Comment(11) | TrackBack(4) | Movie(米)
この記事へのコメント
テーマが表裏になってんのは多分トムのせいと思われ?って違うかな(笑)なんかそういう感じがひしひしと。だってティムのところは完全に俺様演技全開だったし。
Posted by tonbori at 2006年02月01日 01:49
バラゴンにガイラ…(爆藁)。
キングジョーっつか、吾輩的には
「イデオン」の“重機動メカ”を
想起しちまいましたが…(ガンガ・ルブ?かな)。
Posted by mori2 at 2006年02月02日 13:10
>tonbori堂サマ
ともかく、ティム・ロビンスには悪いが、あの地下室の場面は要らない。ついに殺人を決意したトム様の顔の演技は見てらんない。
>mori2サマ
東宝ロボットで行きたかったんですが、ロクなもんがないので、円谷プロから持ってきただけで殆ど意味がなかったですね。
Posted by 森と海 at 2006年02月03日 00:29
「宇宙戦争」劇場で見てから、見直して無いのですが、印象薄いですね。(笑)
トライポッドの登場場面とダコタちゃんの叫びぐらいでしょうか・・・。
次は巨匠に「人類SOS トリフィッドの日」のリメイクでもお願いしますか。(笑)
Posted by samurai-kyousuke at 2006年02月03日 22:49
>samurai-kyousukeサマ
ダコタちゃんは上手すぎなんですが、もう少々飽きました。出すぎではないかと。目の周りは隈っぽいのも、ちょっとなんですし。
Posted by 森と海 at 2006年02月04日 08:04
こんにちは。
通りすがりに、この『宇宙戦争』と『マイノリティ・リポート』にトラックバックさせてもらいました。
スピルバーグの偏(変?)愛者なもので。笑

自分にとっては、この『宇宙戦争』、そして続く『ミュンヘン』にて、スピルバーグの過去のキャリアをある面においてかなり解放しきった感触をもっております。
総括した、って感じですかね?
次作が何になるのかは分かりかねますが、しばしの休養の後、果たしてどんな姿を現すのか・・・。
大変興味をもって待っている現在です。
突然のマニアックなツッコミになってしまいましたが(苦笑)、機会があればまたよろしくお願いします。
では。
Posted by ryodda at 2006年09月18日 11:23
>ryoddaサマ
〈 プライベート・ライアン 〉も一つの節目ではないか?スピの作品て、劇場・メディアを含めるとほとんど見てますが、その流れからしても、〈 SPR 〉の身も蓋もなさは特異であるように思います。

スピが今後、ギャスパー・ノエみたいな映画を撮ることが出来たならば、「ああ、達観したんだなあ」としみじみできそうです。
Posted by 森と海 at 2006年09月18日 20:24
『プライベート・ライアン』の特異性に関しては、まさしくその通り、あんなおかしな映画はない(笑)と思います。
自分なりの感覚で言えば、『ライアン』から始まったものが、『ミュンヘン』でひと段落した、というか。

>スピが今後、ギャスパー・ノエみたいな映画を撮ることが出来たならば、「ああ、達観したんだなあ」としみじみできそうです。

うーん、ギャスパー・ノエですか。
ノエは苦手なんでなかなか言い返しづらいのですが、なんというか、あそこまでぶっちゃけられるとちょっと困っちゃうというか、スピもそうはならないだろう、性格的にも、なんて思っています・・・が、どうでしょうね。
Posted by ryodda at 2006年09月19日 13:18
>ryoddaサマ
まあ、ノエは特異点ですから(笑。
いや、ボクもあそこまでぶっちゃけたモノを作るとは思いません。ハリウッドに背をむけるようなことをするのは、さすがに出来ないでしょう。
Posted by 森と海 at 2006年09月19日 21:06
今さらながら観てUPしたので、TBさせていただきました。
ティム・ロビンスが出てくるまではかなり凄いですね。期待以上の出来にびっくりでした。
エミリー・ワトソンのお姉ちゃんは苦手です(笑)
Posted by micchii at 2006年10月02日 14:30
>micchiiサマ
接木も同じ属の木同士なら実もなりますが、これは実も蓋もない。エリック・バナをあれだけ苦悩させる演出力(ミュンヘン)があるならば、その線を狙えばよかったのではないのかと。興行的には失敗するでしょうが。
Posted by 森と海 at 2006年10月02日 22:56
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