2010年06月21日

**戦争は麻薬デモヤンナイトヤッテラレナイのでは?〈ハート・ロッカー〉**

ついに、というかやっと、というか何トチ狂ったか、我が町に〈ハート・ロッカー〉がかかっちゃいましたよw。いやもう有り得ない位の快挙。劇場で映画を観るという行為を忘れてますからね、うちの町の連中は。

言い訳しておきますと、最近は積極的に劇場詣では自粛しています。なにせ非常事態宣言県ですから。ワタシんところからだと、隣県に行くには(それでなくても来るな言われてますからね)申し訳なかったり、かといって炎上中のところを横切っていく勇気もなかったり・・・。しかもうちの隣家さんが獣医だったりしますから、「俺がウイルスを運んでくる訳にはいかん」という思いも強く。

そんな中で、いわゆるエリア内に〈ハート・ロッカー〉がかかったんです。そりゃ行くっしょww。


さて、本題。

なーんだか、いやーな暑さの映画でしたね。同じ中東で同じようにヒヤヒヤものなんだけど、〈キングダム/見えざる敵〉あたりと比べても、不快指数が一段高い様に感じました。

先に言い訳しとくと、事前情報をカットして観た訳ではありませんから、フィルターが掛かっていないとは言い切れません。駄菓子菓子、冒頭でガイ・ピアーズ扮するトンプソン二等軍曹の派手な爆死を経て、ジェレミー・レナー扮するジェームズ一等軍曹の不敵な爆弾処理(最初の芋づるとトランク)を観ても、なんらカタルシスは有りません。周囲を警戒するサンボーンやエルドリッジの緊張のほうが物々しくて、そこに正義なんてもんはあるのかい?と思うのが普通でしょう。ぶっちゃけ、小ブッシュのいう大量破壊兵器はそこに無かったんですから、正義はドコにもなかったようなんですがね。

上に上げた芋づるとトランク以降、スナイパー戦(コレについては皆さん語っておられますので華麗にスルーw)を経て、チームとしての結束を固めますが、それ後が泥沼ですね。人間爆弾のエピ・タンクローリーのエピと、ジェームズが壊れ始めてますねん。そこいら辺、キャスリン・ビグローの姐御の旨いところで、冒頭は華々しく成功、後半鬱な展開という物語としてのエピの抽出がさすがです。本来、派手な失敗(爆弾処理中に爆死)という事さえなければ、とりあえず年季は明けます。実際の兵隊さんでも、上手く行く時もあれば下手打つこともありつつ、幸運な人は除隊になっていくでしょう。そこを姐御は、観客にPTSDを匂わせるような展開にあえてしています。話は脱線しますが、この映画を観て「戦争賛美だ!」と吹かれる方々は、何を観ているのでしょう?いや(笑)けして、某監督をディスっているのではありませんw。ワタシは結構というか積極的に好きな監督なんですがね。このブログでもかなりの数取り上げているんですけど・・・黒沢清監督。あっ、言っちゃったねwww。あれほどの人でも見方曇らせるんですねえ。まあ、仕様がないといえば仕様がないです。なにせ、日活でポルノやってた人ですから。ポルノやっていたからダメってことではなくて、映像媒体であれ画像媒体であれポルノ関係者には、心情的に極左系の人が多いのですよ。その辺の事情はネットゲリラ(ググってくんなマシ)を読めば分かりますし、第一若松孝二監督なんかまんまですもんね。今迄あまり思想を匂わせる映画を撮ってこられなかった黒沢さんが、カミングアウトされたようでなかなか楽しめる展開でした。

さてさて、一番意見が分かれるところが、兵役明けたジェームズの砂を噛むような日常と再志願のとこではないでしょうか?イラク人サッカー少年に対する態度を一変させた程、精神ボロボロ状態になりながらも、やっぱりもう一度志願するという文脈がかなーり判りにくい。ラストにかかるメタルを知っていればすぐに判るらしいのですけど、こちとら日本人には普通判りませんよね。というか、姐御自身がわざと判らないように煙幕仕込んだんでしょう。ならば、姐御の過去作を探ってみようではありませんか。前作だと〈K−19〉ですね。この映画も凄かったなあ。あくまでロシア原潜という但し書きの上で、放射線被曝をモロに描いてましたからね。ハリウッドでは、近くで核爆発があっても冷蔵庫の中に逃げ込めば助かる(ハリソン・フォード)というのがデフォです。もしくは爆風に掛っても外見上は全く変わらず絶命(モーガン・フリーマン)と云う風に、マトモに被爆を扱うのはタブーらしいのですが、姐御はしれーっとして描きました。肝の座り方が尋常ではありませんね、姐御は。さて、そんな〈K−19〉を観ていきますと行き着くのが、「役割を果たす」なんです。ドコの命知らずが、命令とはいえ雨合羽で炉内に入っていきますか?良い悪いは置いといて、理にかなうかなわないは置いといて、とりあえず現状で自分の出来ることを全うする人々を描いていたのが、〈K−19〉でした。そこを拡大解釈すると、姐御の映画を思い起こしますと、「周りがどうこうより、とりあえず自分のやり方でオトシマエをつける」というものばかりですね。男前だわあ!さすれば、ジェームズの再志願という行動も、「クソッタレな戦場だけど爆発物処理が得意なオレはオレの流儀で責任を果たす」と云う風には見えませんか?デルタ二隊に輸送されるチヌーク内は、暗くて表情はよく判りませんけど、少なくともトンプソンの代わりに配属された時のふざけた表情では無かったように思います。

冒頭、どっかのジャーナリストの文を引用して「war is a drug」なんて煙に巻いてますけど、この構造って〈K−19〉と全く同じですね。つまり保守的国民層に付け入られないように、巧妙に偽装しているのです。戦争が麻薬なのは上で指揮している人達の話で、戦場を駆けずり回っている人々は麻薬でもないとやってられないのです。それを示したのは、冒頭のトンプソンの場面で、エルドリッジの言う「サンボーン商会」のところ。後にも先にも、グラス関係の描写はココだけです。戦争は麻薬だとコンテキストしながら、すぐさま「兵隊にはグラスはよく売れる」つまり必要と上書きしているんですからね。




はっきり言って反ブッシュの反戦映画なんですね。






posted by 森と海 at 20:06 | Comment(2) | TrackBack(0) | Movie(米)
この記事へのコメント
いろいろたいへんな折り、
こういう映画がちゃんと上映されたことをまずは慶賀の至り。
で、お見事、いい読み筋ですね。
でも正直黒沢さんとかの言い分は分からなくも無い気もするんですよ。
それだけ今の日本では自分も含めてだけど、戦争を肌で知ることが減ってきているとともにヤバイって感覚までも鈍ってきているのかもと思いました。
Posted by tonbori at 2010年06月23日 23:31
>戦争を肌で知ることが減ってきているとともにヤバイって感覚までも鈍ってきている
それは同意です。ですが、そこは映画作る方も観る方も、想像力で補っていかないととも思います。
で、今黒霧飲んでるんで暴言吐きますが、氏の終末観の現実味が薄いのは、そこら辺なのかなあと・・・思ったり思わなかったりw


あ、本文で〈リダクテッド〉絡めるの忘れてた。
Posted by 森と海 at 2010年06月24日 21:18
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