2006年04月09日

**「ぼっけえ、きょうてえ」を読んだ**

 近頃はあまり本を読んではいなかったが、〈 MASTERS OF HORROR 〉の三池崇史監督〈 IMPRINT 〉の原作ということで、岩井志麻子著「ぼっけえ、きょうてえ」を読む。

 といっても40ページほどの短編ゆえ、速読の人なら立ち読みでも読み下しが可能。書店で慌しく読むのと、 薄暗い自室で読むのとでは味わいも段違いだが・・・。

 

 ―きょうてえ夢を見る?

 この書き出しより始まる本作は、女郎宿でうつらうつらとする旦那さん(客=読者)の寝物語として、 目や鼻が左のこめかみに向かって吊り上がった女郎の妾(わたし)が、 その強烈な生い立ちをぽつりぽつりと語るという独り語りのスタイルである。特質すべきは、 題名でも分かるとおり全編岡山弁であるということだ。読むにつれ、文章が台詞となり、読む者のなかで肉声として響き始めてくる。きょうてえくなるのは読者という筋書きだ。 内容はナンだから書かないけど、苦手な人には読むのを投げ出したくなり、ボクなどのような大丈夫な人には全く怖くないだろう。 ここでの怖さは、生理的嫌悪感の帯域(個人差大)に左右されるからだ。ちなみに三池さんの映画の方は、 旦那さんこそアメリカ人文筆家クリスとなっているようだが、妾(わたし)をチャイニーズが演じるということはない。井沢八郎の娘だ! ともさかりえのほうが、ピッタリとも思えてくるが(失礼)。

 読み終えて思ったこと。三池さん、この本にかなり入れ込んだんだなあ、と。
 この本に収蔵されている「依って件の如し」 など無彼岸常受苦悩処の番人まで登場している。三池さんは、この番人をお笑いの番人に仕立て上げるオフザケをしてしまったが。 (牛頭) さて、肝心の「ぼっけえ、きょうてえ」だが、 何の根拠もないが三池さんは過去にも映像化を企画してたんじゃなかろうか?時期はズバリ2003年頃。〈 三更2 / 美しい夜、残酷な朝 〉 の中の〈 盒葬 (Box) 〉は、「ぼっけえ、きょうてえ」 にインスパイアされて生み出されたものではなかったのかと。もっと言えば、「ぼっけえ、きょうてえ」そのものを撮る気でなかったのかと。 思えば〈 盒葬 (Box) 〉の薄気味悪いラストは、三池作品を見慣れた者であっても??? な幕引きであった。長谷川京子の姿に何を見出せば良いのか分からず、途方に暮れた。アノ頃この本を読んでいればなぁ、〈 盒葬 (Box) 〉とは「ぼっけえ、きょうてえ」を換骨奪胎した作品だったのだ。両方を見比べていると、 ぼんやりとその真の姿が見えてくる。あの作品は、長谷川京子(=妾)に訪れる恐怖ではなく、そういう語り口にあえてミスリードした、 観客へ投げられた怖さ(後味の悪さ)だったんだな。撮ろうと思えば「ぼっけえ、きょうてえ」自体を撮ることも可能だったろうが、 そこはそれオムニバス作品の場合、他の作品とのバランスもある。現に、フルーツ・チャンの〈 餃子 〉があんな内容だけにカブってしまうよなあ、胎児―胎児じゃ。密かにタイミングを計っていたところに、アメリカから〈 MASTERS OF HORROR 〉の打診が来た。 「ミスター・ミイケ、アメリカは自由の国だ。表現にタブーはないぞ。イェーィ!」(映画秘宝より)とかなんとか言われてその気になって・・・ 、なんだか凄いことになったみたいだねーっ。

 

posted by 森と海 at 22:53 | Comment(2) | TrackBack(1) | 三池崇史
この記事へのコメント
岡山出身者に友人が多く、それらしいものを自分で喋ったりもするので、岩井志麻子は文庫に降りたら読んでますね、結構。
あの方は結構、手練れで、安心して読めるあたりがいいです。企画で走るものが多い最近のホラーの中では「文章がしっかりしてる」というだけでポイント高くなるし。
ただ、どうなんだろうなあ。三池は好きだけど、最近、小説の映画化ってなんかイヤなんだよなあ。
Posted by acoyo at 2006年04月11日 10:50
隣県だしね。
岩井志麻子女史は最近は作家としてのキャラクターばかりがクローズアップされてるようだけど、この本のように、「すべての謎を解き明かさず謎を謎として残す」姿勢は気持ちいい。HORRORは謎は最後まで残さないと。
〈 オーディション 〉なんかもそうだけど、行動原理というかバックボーンを説明しきらない姿勢は、三池さんと岩井さんは良く似ているように思います。〈 IMPRINT 〉は全編英語(アメリカ向け)でグロを見せるものでしょうから、ちょっと違うかも知れませんが。
Posted by 森と海 at 2006年04月12日 23:40
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三池監督の過激過ぎる作品「インプリント」
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Tracked: 2006-05-29 15:30
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