2006年04月18日

**広げるだけ広げた大風呂敷を畳まない〈 遊びの時間は終わらない 〉**

 この〈 遊びの時間は終わらない 〉という一風変わった題名の邦画について、 何のことかさっぱり分からないという人がいたら、それは幸運な人だ。あらすじなど検索せずに、 さっさとこのBlogなど閉じて、レンタル屋に走るがよい。ヒントはモックン(本木雅弘)の出ているコメディ。

 十数年前に初めて観たときのボクがそうだった。ストーリーなど知らないほうが面白い。だって監督の萩庭貞明さんてば、 物語の最初っからワザと現実と役割演技を混同させるように撮っているんだもん。

 

 日本のコメディ映画としては、奇跡的にキャラクターや台詞に頼らない映画だ。それが証拠に、 いわゆる喜劇畑の人やお笑い芸人が一人も出て来ない。もちろん芝居の世界からは濃濃いキャラクターのお人は参戦している。 ウ〇コネタ等のシモ関係もなし、パロディもなし、大掛かりなセットによるオチもなし。お陰で十数年経っても、未だに可笑しい。

PlaytimeNeverEnd-0 主役である平田巡査(元木雅弘)は、真面目で融通の利かない人物。 そんな男をシナリオのない防犯訓練の銀行強盗犯役に抜擢したから、さあ大変。彼は犯人になりきってしまったから、 過去のありとあらゆる事例に倣って行動する。鳥飼署長(石橋蓮司)らは、予想もつかない展開に右往左往。田舎では滅多に無い事件 (?)に、地元ローカル局はキー局をクビになって流れてきた柏崎(萩原流行)を起用した。この柏崎、 数字のためなら手段を選ばぬ男。県警本部長は鳥飼を叱り付け(左画像は怒られてる鳥飼署長)、県警から深川次長(原田大二郎) を陣頭指揮に派遣した。

  表面的に見れば、 マスコミ受けを狙った生きた訓練と称して計画もなく始めてしまった鳥飼署長の無能さや、 安易な考えのまま訓練に参加した警察官や、警察の官僚体質を笑い飛ばすようにも見える。事実、キャラクターに頼らないとはいいつつも、 蓮司さんのこの顔にはニヤケざろう得ない(笑)。肝心の平田巡査は堅物で笑える要素は少ないし、 本木クンの演技は場の雰囲気を読めない冷静さ、という彼の引き出しの中でも典型的なもの。 このまま続けても尻すぼみ。そこで燃料投入。柏崎の投入となる。なんと言いますか”狂人”柏崎の登場で訓練はエスカレート。 公明正大というニシキの御旗を振りかざし、警察側の早期決着という目論見をことごとく潰しにくる。そして、”現場” 平信用金庫に詰め掛けた無責任な一般大衆。責任は取らないがイベントは好きという連中に囲まれ、平田巡査はある意味追い込まれてゆく。 彼だって、警察という縦社会に身を置く者、ここで上役に睨まれたらいくら昇進試験に受かっても上への道は閉ざされる。 〈 新宿鮫 〉はキャリアで警部だというのに、 新宿という暴のいっぱい居る所轄の現場を泳がにゃならんのですから。頃合を見計らって決着をつけようとするのだが、 イベントを長引かせたい柏崎ともっともっと楽しみたいという大衆に邪魔されて終われない。ああ残酷な! 平田巡査にも未来というものはあるのだぞ。マスコミの暴走や無自覚な大衆まで風刺しているのだ。

PlaytimeNeverEnd-1  事件は田舎のイレギュラーな訓練では終わらなくなる。警察庁長官は、 警官によるあるまじき発言に対し陳謝し、画面には現れないが全国が注視する事件となっていく。このでたらめな発展具合も堪らない。 そんな中、平田巡査は訓練とホンチャンの篭城事件の区別が段々つかなくなってくるし、鳥飼署長はあくまで訓練と認識してるし、 柏崎はホンモノの事件にしたいし、大衆は例によってどっちでもいいし。皆の望む方向が極端に変わり始める。 風呂敷の畳み方を忘れた人、畳もうとする人、際限なく広げようとする人、脇でチャチャを入れる人。で、 広げっぱなしやりっぱなしなの。

 いや珍しいよ、ここまで投げっぱなしで終わるコメディも。しかも「この先どうなるんじゃい、バカヤロー!」 とまで怒る気には全くならない。アホアホだもの。まだこの先10年は見れる映画なのだ。

 ちなみに音楽は高木完氏。この音楽には救われている。これが、ヒット歌謡なら陳腐化も早いってもんだ。

 

posted by 森と海 at 23:43 | Comment(3) | TrackBack(0) | Movie(邦)
この記事へのコメント
 アイデアで勝負した傑作ですよねぇ。安心して観ていられるのに、どきどきするなんてなかなかないでしょう。
 たしか『GONIN』と『226』観て本木君がいいなぁと思って借りて観ました。
 日本映画ってアイデアはいいのに、まとまりよく終わるために後半しょぼーんとするのが多いですが、これはお見事。
 体力消耗のための腕立てシーンが印象的でした、笑。
Posted by cardhu at 2006年04月19日 01:13
すっごいうろ覚えなうえぐぐってないけどコレって以前コニタンこと小西博之主演でドラマ化されててオチが一緒だったかどうかがすげー気になってます(笑)あとコニタン版には小林克也さんが副署長かなんかの役で出ていたんだけどそれもうろ覚え。
気になるなあ。で最初の部分は全く同じやったなあという気はするんだけど。
そんときもスゲー面白かったっすヨ。
Posted by tonbori at 2006年04月20日 00:30
>cardhuサマ
傑作なんですよ。しかも予算規模はあまり大きくない。アルゴの作品はこれ以外でも観れる作品が多くて、結構観まくっていました。
>tonboriサマ
なんかそんなのあったような気がする。コニタン(小西真奈美ではない)主演というドラマかあ。なんだかうっすらと・・・。
Posted by 森と海 at 2006年04月20日 23:08
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