2010年11月11日

**シドニー・ルメットは皮肉屋〈未知への飛行 Fail-Safe〉**

ということで、TSUTAYA面白くなかったら返金しますシリーズで取り上げられたタイトル作を鑑賞。こういうシリーズは、埋もれてしまってレンタル屋に並ばないタイトルが再び脚光を浴びる(実際浴びているかは不明)ので、ずっと続けて欲しいものです。

さて、1964年公開の〈未知への飛行〉ですから、あらすじをぜーんぶ書いちゃってもネタバレで非難されることも少ないでしょう。だから書くよ!

オマハの戦略空軍司令部にナップスター社より納入された最新鋭の防衛システムが、誤作動を起こし、アラスカ上空で定巡回中だった戦略爆撃機(画像からするとその機影はF-102みたいなんだが、なぜか複座?)に命令が発令された。内容はモスクワへの核攻撃命令。命令撤回は30分以内でしか行えずその後は一切の帰還命令を無視せよと厳命されていた機長は、ソ連の通信妨害によって基地との連絡を絶たれたのち、モスクワへ向かう。このままでは核戦争となってしまうという事の重大性によりクレムリンとのホットラインで対話を試みる合衆国大統領は、軍事機密まで明かして撃墜を依頼する。しかしソ連の高射砲群・迎撃ミサイルをかいくぐり、ついに任務を達成する爆撃機。ここにおいて合衆国大統領は、「意図的攻撃ではない(機器の故障である)証明として、自らの肉を断つ決断をする。「ニューヨークを核攻撃せよ!」そしてニューヨークに米国爆撃機によって核爆弾は放たれた。

「まだ大陸間弾道ミサイルも潜水艦発射型ミサイルも存在しなかった時代、核を積んだ爆撃機は巡回任務についていたとは聞いていたが、よく考えるとコワイ話だーね。墜落したらとか考えたら夜も眠れない」なんて見当違いの感想も持ち合わせてしまった。まっとうに考えれば、核武装することによる国家間の疑心暗鬼とか、機械万能主義への警鐘といった高尚なことを言うべきだろうけど、観ていてワタクシは、

「どこがフェイル・セイフやねん!全然フェイルセイフになっとらん。嫌味かw」

とツッコんでしまった。

工学的な学問を少しでもたしなんだ方なら判ると思うが、暴走した際危険性の高いシステムを設計する場合、どう転んでも安全方向に傾くように設計するのがフェイル・セイフという思想です。簡単にいえば、普段はセンサ使ってマイコンで電流値を見ていても最終的(マイコンが死んだ場合)にはもっと単純にヒューズで物理的に遮断しちゃうよってなんてことです。この映画の場合、命令が発令後30分以内の撤回命令がフェイルセイフポイントと呼ばれているけど、それがあくまで通信に頼っているのですよ。通信がダメな場合の予備手段無し。そしてモスクワまでは数時間かかかるというのに、その数時間の間に状況が変わろうと打つ手無し。最終的な爆弾投下命令とか無しです。フェイルセイフ思想が全くもって足りないと思います。

で、全面核戦争を回避するためにとられたフェイルセイフが、自国に対する核攻撃だなんていう映画に対して堂々とフェイルセイフというタイトルをつけるなんて、なんていう皮肉なんだとツッコんでしまう訳です。原作がそうなってますからという言い訳もありますが、映画は監督のもの、変えることも出来たはずです。シドニー・ルメットの今の処の最新作〈その土曜日、7時58分〉も突き放したようなシニカルさがマゾヒティックな快感に変わる映画だけに、やっぱこのルメットのオッサンはただもんじゃないと思った次第。キャリア初期からそうだった訳でつねw





こちらはジョージ・クルーニーが制作したTV映画です。




posted by 森と海 at 21:11 | Comment(2) | TrackBack(0) | Movie(米)
この記事へのコメント
この作品はガキの時分に見てえらく怖かった思い出が。
でも作戦室スキーとか暗い部屋でレーダーとにらめっこスキーはあきらかにこの映画の影響だと思われww
でおっさんになって思うのは冷戦とキューバ危機ってのは本当にアメリカ人びびったんだろうなーとも言える映画でしたなー
Posted by tonbori at 2010年11月16日 20:58
これ、NYの代わりに極東の同盟国に落とす話にしたら、興行的には当たったんじゃないかなあ。モチロン欧州からの非難の声は上がったであろうと予測されますが、肝心の極東同盟国からは何の反応も上がらなかったであろうと思われますよ。

そしてルメットのキャリアの汚点となるとwww
Posted by 森と海 at 2010年11月17日 22:39
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。