2006年05月29日

**歴史上の人物を自分なりに解釈するという作業〈 竜馬暗殺 〉**

 ザクっと言っちまえば、この黒木和雄(先ごろ逝去)の昭和49年監督作、同時代ではないし、 その昔レンタルで見かけた覚えもあったが結局観ずじまい、こちとら若いときにATGを見るほどシネフィルではない。 ということで今頃になってようやく観ることが出来た作品だ。

 映画にとって同時代というものは、その時代の空気を知る知らないという意味において大変重要で、時代が変わってしまった後 『充分理解した』と思い込んで見たところでそれは幻想である。『時代を写す鏡』それが映画だからである(格調高いというか、 すっごいエラソだな(笑))。

 そこら辺を踏まえて、ヨタ話を。

 

 坂本竜馬。幕末の志士にして、当時としてはかなりの進歩派、そして意思半ばにして凶刃に倒れた男。明治維新に詳しくなくたって、 好奇心のそそる人物だ。その死に関してもいまだ謎も多いから、これまた興味を惹く。みんななぜか惹かれちゃうんだな。

 有名なところでは、芸能界から武田鉄也氏。高校の時、司馬遼太郎を読んでからというずーっと竜馬ジャンキー。『金八先生』 における役名が「坂本金八」なら、小山ゆうの『おーい!竜馬』の原作を引き受け、挙句に〈 幕末青春グラフィティ Ronin 〉 ではズバリ竜馬を演じる。こうして見てみると、彼の中で発酵した竜馬像には、純粋・不器用・理想家という顔が覗く。 武田鉄也氏を知りえないので想像でしかないが、自身の理想と被る部分も多いのではないかと思う。

 さて、〈 竜馬暗殺 〉だ。この作品における竜馬(原田芳雄)は、いい加減で女好き、先を見通す確かな目、友・中岡慎太郎 (石橋蓮司)を切れない情を持つ男として描かれる。今となっては原田さんのイメージにピタリと嵌る。 グータラで女に食わしてもらっているという男を演じれば、これほど嵌る人もいない。品行方性な原田さんて想像できない。 しかも新撰組に狙われ、見廻組に狙われ、功名を立てようとする浪人たちに狙われ、味方であるはずの薩長に狙われ、 土佐藩士にまで狙われている。あまつさえ中岡慎太郎さえもが竜馬の命を狙っているという四面楚歌という状況下で、 グータラと呑気に女と乳くりあったりもしている。ひょっとして原田さんを念頭に当て書きされた脚本か? 今で言えば社会不適合者に限りなく近いのだが、時代は安保闘争の頃という指摘もある。残念ながら同時代に生きていない (その頃は育つ真っ最中でして)ので、その指摘の真偽についてはやぶさかではない。さてここで監督のフィルモグラフィを確認してみると、・・ ・メジャー系(東宝やら松竹やら)製作の作品は一本もないことに気づく。一貫してインディペンデントの人なのだ。 メインストリームを歩かないということ、そこには製作上の自由はありつつも諸処の制約からの怨念も予想できる。しかもここでは、 『慎太郎は竜馬の命を狙っていながら竜馬は慎太郎に懐を広げる』という”友”を重視する展開である。くしくも竜馬は、 自分の命を狙っている慎太郎の身を案じて、刺客包囲するなか、わざわざ会いに行くという場面さえある。友とは大事なんですね、黒木監督。 なにが言いたいのか全然分からないかもしれないが、要はみんな自分の生い立ちやら理想やらを、 昭和平成の世には誰からも嫌われることない竜馬にダブらせるのではないのかと。そのように感じる。

 ボクが描くなら全然竜馬像は違うよ。切れ者で冷静だけど変人として描く。竜馬はアノ時代では稀代の変人だよ、でも変人だから面白い。 ここにも創作者の投影が(笑。

posted by 森と海 at 23:57 | Comment(7) | TrackBack(0) | Movie(邦)
この記事へのコメント
坂本竜馬役というと、原田芳雄が最高ですね。
あとはNHK大河ドラマ「世に棲む日日」での藤岡弘かなぁ〜。確かこのドラマでは萩原健一が岡田以蔵役でした。
大昔、司馬遼太郎の「竜馬がいく」にはハマってしまいました。京都、高知にも行ってしまいました。(笑)
Posted by samurai-kyousuke at 2006年05月30日 08:39
ええとね、やっぱ大河で細川俊之がやってたと思う。森と海さんの考えるのとも私が考えるのとも違うと思うけどけど、「知的でクールな竜馬」ってあれくらいじゃないかなあ。
横レス>samuraiさん
ごめんなさい、それ、倉本脚本の「勝海舟」じゃないのかなあ? いえ、見てないけど、こないだキャスト表みたんで。世に棲む日々が元ネタの大河は「花神」(花神+世に棲む日々)で、あれの竜馬は夏八木勲だったと思う(こないだ総集編で見たんで)。
>誰からも嫌われることない竜馬
私が描くなら、熱狂的支持者と毛嫌いする人間が居る存在として描きますね。「みんなに好かれる」竜馬像にはちと飽きた。
Posted by acoyo at 2006年05月30日 10:52
最近観た『実録新選組』シリーズでは哀川翔が演じてて「世界を知るには、まず世界の女を知ることだ」とナイスな発言をしていました、笑。
Posted by cardhu at 2006年05月30日 21:41
>acoyoさん
そうでした。(汗) ありがとうございます。
「花神」も気に入って見たのですが、混同しておりました。
Posted by samurai-kyousuke at 2006年05月30日 22:31
>all
〈 竜馬を斬った男 〉では根津甚八でした。ってみんな、竜馬を演じた役者の報告会かよ!

そね、大人計画で培い、起用される際も期待されるアノ演技プランを捨てた上であえて、阿部サダヲで竜馬が見たいような見たくないような。

豆知識:エンドクレジットを眺めてたら、助監督の所に『三池崇史』の名が!
Posted by 森と海 at 2006年05月31日 22:43
>要はみんな自分の生い立ちやら理想やらを、昭和平成の世には誰からも嫌われることない竜馬にダブらせるのではないのかと。そのように感じる。

どの映画でもそうだけどこと竜馬ってのはそういう願望を託されやすい人なんかもしれないね。(その生き様、死に様も含め)
元春のコミュニティサイトでのお友達が興味深い説を唱えててよければ一度覗いてみて。
中岡さん結構竜馬よりもほんまの意味での時代のキーマンになりえたかもとか。
Posted by tonbori at 2006年06月01日 00:47
竜馬を悪く言う人って皆無に近いもんね。

>お友達が興味深い説を唱えてて
ツバメっち教授のとこですね。読んでみます。
Posted by 森と海 at 2006年06月01日 23:23
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