2006年06月11日

**戦後強くなったものは、〈 豚と軍艦 〉**

 個人的手前勝手〈 今村昌平 〉追悼第一弾!つーか第二弾が実現するか不明?

 昭和36年、日活製作、監督今村昌平、主演長門裕之、出演吉村実子・三島雅夫・丹波哲郎・大坂志郎他。戦後、 基地の町横須賀の特殊な事情を背景に、ヤクザの三下欣太(長門)と生活の為にオンリーさんになりかけている春子(吉村) の若い2人を軸にした人間模様。

 

 これが、あらすじを読んでみたって全然面白そうに思えないのだよ。イマヘイ映画というやつは、 どれをとっても文章で読むとつまらなく感じる。が、観るとそのエンタルピーの高さに圧倒される。 ハリウッド産のようなボンボン爆発するような物ではないが、密度が高いというか、念が織り込まれているというか、情念? そう情念が放出されている。情念量を測定する機械があるなら、間違いなくトップクラスだ。

 「戦後強くなったものは女と靴下」という言葉がある。元々強かったという向きもあろうが、戦後廃墟から立ち上がっていくなかで、 男は過去の歴史の中で培った方法論(闇の世界に身を投じるか、もしくは日の当たる場所で地道に)で復興してゆく。が、女は違う。 男に頼らないという新しい方法を身につけていく(正確には以前も一部にはあった方法だが、”戦後”にはそれが広く頒布されていく)。 この作品の登場人物春子の生き方は凄いぞ。まず始まってそうそう欣太の子を堕胎しているし、 実の母親と姉にはアメリカ水兵のオンリーさんになるように薦められているし、町を歩けばポン引きに水兵を紹介しようと持ちかけられる。 オーパイ掴まれてナ。方や欣太は渡世者とはいえ、闇市時代からの愚連隊崩れ鉄次(丹波)の舎弟、 いざとなったら裏切り御免といった結びつきの弱い仲間の間で、ふらふらしているだけ。義もなく明日もないフーテンの日々。 春子はしきりに欣太に職工になること・この町を出ることを薦めるが、欣太は耳を貸さない。ようやく一緒に町を出て行くことになったその日、 欣太は些細なトラブルから、内輪もめとなり弾を腹に喰らって、便器に顔を突っ込んで息絶えた。 心底惚れた男が一緒に逃げようとした日に死んじまうんだ。なんと不幸の重なることか!これだけ重なれば、哀しく描くのが順当ってものだが、 今村監督はそうは描かない。

 姉のセッティングでアメちゃんとピクニックに行く日、有り金を掴んで春子は出てゆく。向かうは欣太と行くはずだった川崎。 毅然とした歩調で、空母入港で他所から集まって来た女達とすれ違いに。

 春子は強いことは確かだが、米兵にぶら下ることで生きてゆこうとする女達もしたたかである。男どもはというと、 米軍の残飯を頂いて豚を飼うぐらいのことしか出来ないのだ。しかもその豚を巡って内輪もめ、だらしない。女強し!やはり 「戦後強くなったものは女」である。

 つーことで、こういうこってり重いがたくましく生きていくドラマを『重喜劇』と呼ぶわけですね。勉強させて頂きました。

 

posted by 森と海 at 23:53 | Comment(0) | TrackBack(0) | Movie(邦)
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