2006年08月06日

**一海兵隊員の体験した湾岸戦争〈 ジャーヘッド 〉**

1990.8.2 イラク軍、クウェートに侵攻
1990.8.8 ブッシュ大統領、サウジ防衛名目に議会承認を経ず4万人の兵力のペルシャ湾派遣を発表、「砂漠の盾」作戦

 原作は、映画における主人公アンソニー・スウォフォード自身による「ジャーヘッド/アメリカ海兵隊員の告白」である。 この原作の権利を手にしたプロデューサー、ダグラス・ウィックは元海兵隊員の脚本家ウィリアム・ブロイルズに脚色を依頼。 そして監督にはサム・メンデスを指名した。観れば一発で判るのだが、作品の構造は極めて〈 フルメタル・ジャケット 〉に酷似している。志願してきた若者が殺戮マシーンに作り変えられる、あの話である。〈 フルメタル 〉 のパクリだと言うのは容易いが、その責めをサム・メンデス一人に押し付けるのはどうかと思う。原作を読んでいないので詳しいことは判らないが、さてどの時点で〈 フルメタル 〉色が取り入れられたのか? そしてもう1つ、ベトナム戦争と湾岸戦争は全く趣きが違っていた。

 

1991.1.15 イラク軍クウェート撤退期限切れ
1991.1.17 米軍空爆、「砂漠の嵐」作戦突入、「湾岸戦争」はじまる

 戦闘シーンの全く存在しない戦争映画なのだ。殺戮マシーンに仕立て上げられ戦地に赴いては見たが、敵イラク軍の機甲部隊と遭遇することもなく、散発的に砲火を聞くばかり。但し敵は、サリン等の神経ガスを使用する懸念があり、 絶えず緊張が付きまとう。その毒ガスの対抗薬として兵士たちが強制的に飲まされていたPBには、後遺症に対する請求権の棄却の誓約書付き。また、映画では描かれてはいないが、 空爆では推定300〜800トンの劣化ウランを投下、その放射能は地上戦に参加した多国籍軍の兵士にも影響があったとか無かったとか。とにかく、ベトコンと命のやりとりをした挙句にバランスを崩してゆく兵士たちという過去に作られた帰還兵PTSD物とは一線を画す。

1991.2.24 米軍、地上戦開始、「砂漠の剣」作戦

 「海兵隊はみな兄弟だ!」ついリー・アーメイを思い出してしまう。
 祖父・父と海兵隊員であったスウォフォードは、「最高の生き方がある」そう信じて海兵隊の一員となった。偵察狙撃隊STAの一員としてその才を開花させたスウォフォードはサウジに派遣される。そこでは訓練と待機の日々。 退屈な日々は、殺戮マシーンとしての力を外に暴発できず、内に向けるしかない。戦闘が始まる前に既に精神的にはいっぱいいっぱい。やっと地上戦が開始されたが、敵は見えず迫撃砲に曝され、チビることぐらいしか許されず。

1991.2.27 イラク、安保理決議受諾を伝達、ブッシュ大統領、軍事作戦停止を宣言

 〈 フルメタル 〉では、ベトコン狙撃手の女性の「Shoot me」の願いを聞き入れてジョーカーが引き金を引いた時から、ジョーカーの精神は殺戮マシーンたる肉体と同化した。〈 ジャーヘッド 〉では、引き金を引く機会すら与えられないが、既にスウォフォードの精神はズタズタである。してみれば、生きるか死ぬかという極限が心身に大きなダメージを与えるだけでなく、戦場その場に居ることそのものが大きなストレスを心身に与えているということだ。これはコワイ。一発も撃たなくても、帰還後も体は銃の重みを覚えているし、それは永遠に忘れることの出来ない。体に深く刻まれた記憶。

1991.4.6 イラク、国連停戦決議正式受諾定

 冒頭の印象的なスウォフォード自身の独白を記述しておく。結局これがすべてだから。

この物語・・・
男は何年も銃を撃ち そして戦争に行く
帰国し 武器庫に銃を戻す もう銃は手にしない
だが その手で何をしても・・・
女を愛したり 家を建てたり― 息子のオシメを換えても―
その手は銃を覚えてる

 永遠に消えないということなのだなぁ。願わくば復興支援としてイラク派遣された陸自の皆さんの上にはかかることの無きことを。

 

年表は爆弾はいらない子どもたちに明日を
対イラク戦争 略年表を参考にした。
感謝

 

posted by 森と海 at 23:32 | Comment(4) | TrackBack(2) | Movie(米)
この記事へのコメント
おっと先に観られてしまった。
おいらもこの映画は気になってて今年見逃したやつでは最高にしまったと思っていた作品。
でフルメタルとの相似性は海兵隊の話だから?とも感じれるんだけど。まずは観てみないと。
Posted by tonbori at 2006年08月07日 22:39
>tonboriサマ
まずは観てください。ひょっとすると反戦映画最強分類に入る作品かもしれないっす。
Posted by 森と海 at 2006年08月08日 20:58
私も気になっとりました。
ううむ、ともかく観ます。
Posted by acoyo at 2006年08月16日 22:29
事前の噂じゃ、戦闘シーンの一つもなくただウダウダしてるだけの話っていうことだったんで、思いっきりスルーしてしまい少々後悔。and砂漠フェチには堪らない風景の数々。
Posted by 森と海 at 2006年08月17日 19:44
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ノーマンズランド
Excerpt: 森と海サントコのエントリ**一海兵隊員の体験した湾岸戦争〈 ジャーヘッド 〉** 日刊【考える葦】Returns にまず観てみないとっていうコメントつけたら まずは観てください。ひょっとすると反戦..
Weblog: web-tonbori堂ブログ
Tracked: 2006-08-08 22:31

??ガルフウォーとは何だったんだろう??『ジャーヘッド』
Excerpt: 今までもパパブッシュの湾岸戦争についての映画は何本か撮られている。 例えば『スリー・キングス』がそうだ。 たった三人の独立愚連隊タッチなこの作品は反戦も含ませている。 だがそれはあくまでもエンタ..
Weblog: web-tonbori堂ブログ
Tracked: 2006-10-02 23:09
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