2006年08月27日

**〈 クラッシュ 〉差別・偏見の衝突事故らしいのだけれど**

 「ぶつかり合って、相互理解を深めてゆく」んですと・・・こう、ポール・ハギス監督は申しておりました。とりあえず衝突してみる、 なんともアメリカらしいって思ったら、監督カナダ人だ!

 

 ポール・ハギスさんは、70年代からテレビの世界で実績を積み、本編脚本一作目の〈 ミリオン・ダラー・ベイビー 〉 で俄然注目を集めた人。いきなりテレビの人を引っ張り挙げてくるというのも、テレビがキャリアのスタートだったイーストウッドらしい。んで、 初監督作がこの〈 クラッシュ 〉(この後またイーストウッドの硫黄島2作に絡んでる)。

 さてさて、登場人物のやたらと多いこの作品、幾多の人種差別・偏見エピソードをコラージュして描きつつ、 ラストに向けて急速に収束してゆく・・・のかと思ったら、バラバラでした。「世間って狭いねぇー」程度。面白いことは面白いのだけれど、 飽きないし。

 こういうと人権イデオロギーにがんじがらめになっている人には誤解を招くけど、偏見というものは極めて本能的行為。異種族、 異なる文化・風習を持つ者に対して畏怖を感じ、用心せよと警告を発する過程で醸造された見識が偏見って奴の正体とボクは認識しておりますが。 本能で生きてる動物、例えば犬なんか知らないものには吼えるでしょ。それは自己防衛なのよ。人間だって、姿かたちが自分と違っていたり、 文化が違っていれば、相手が理解できないのだから自然と身構える。生きてゆく上では当然のこと。 しかし人間サマは本能のみで生きているわけじゃない。人間は理性というものを獲得している。 この理性のみがそういう偏見を超越してゆくものと確信している。本能は恐れていても、理性で克服してゆくという意味合いで。 ではその理性の獲得には、・・・やっぱり教育なんじゃないのかと。偏った教育では獲得できませんて。

 んで、このポール・ハギスさん、監督自身がステレオタイプに陥っているように見えるのですよ。黒人を見たらギャングと思えだとか、 ヒスパニックは信用できないとか、その他いろいろ。コレは観る側のレベルに合わせているのかな?とも思ったが、 どうもTVディレクターのエピソード(白人社会で成功し内面白人化していた男が、ある事件をきっかけに黒人らしいキレ具合を披露) を見るにつけ、この人ステレオタイプの人だわと思った次第。そんなとこをヤマ場に持ってきてどうする? というか映画って奴も教育の一つだと思うのですよ、特にこういうテーマを扱った場合。偏見だらけでどうせ歯がゆい場面の連続なら、 下手にですべてを覆い尽くすようなラストは止めて、 いっそのこと差別者も被差別者もまとめて悲惨な目にあった方が教育的効果がありそうだと思いませんか?どうです、お客さん! (なぜかイノキ調)

 んでふと思ったのが、「コレ観て、スパイク・リーはどう思ってるんだろ?」ってこと。この手、 特に黒人差別問題に関しては大先輩なのだし、自身も黒人。作品は中ヒット止まり。ちなみにイエロー・モンキーのボクは、 「取り合えずはヤメロ。降らすんならカエルぐらい降らせてみろってんだ!」と(笑)。

 ハイ、エラく大げさなテーマを持ち込んだ割に、手堅く纏めて売らんかな的野心がミエミエでありました。

 

posted by 森と海 at 22:50 | Comment(5) | TrackBack(4) | Movie(米)
この記事へのコメント
クラッシュつうとまず先にクローネンバーグのを思い出すけどまだ観てないんだなあ。でも一応観るぜリストには入れてます。
でこいつはイーストウッドの硫黄島2部作の前に予習しようかと思っているんだけど・・・・・。うーん。
Posted by tonbori at 2006年08月28日 23:21
いやいや、タレるところのない面白い映画ですよ、〈 M:I:V 〉ぐらい。言ってることは人畜無害だし。んーと、CM明けも御覧のチャンネルでってくらい。
Posted by 森と海 at 2006年08月29日 18:34
>tonboriサマ
前言撤回!いろいろなブログ見て回ったけど、圧倒的に肯定派が多数なのよ。性格の捻じ曲がった者にはそうゆう風には受け取れなかったってことさ(泣。
〈 ミリオンダラー 〉も早くから否定的だったけど、今回も同じ轍を踏んでしまったのかっ。

だから、感動的な映画なんです!きっと。
Posted by 森と海 at 2006年08月31日 22:05
TBありがとう。
蛙を降らすと、別の映画になるけどね(笑)

差別・被差別の問題は、難しいですけどね。怖れやタブーとも絡みますし、下部構造的な現実の反映もある。
僕は、この映画は、「通じあうことの困難さ」けれど「かかわらないとなにも変わらない」そして「かかわったとしてもサイコロはどちらに転ぶかわからない」といった、現在の関係のとり方の難しさを寓話的な装いでリアルに描こうとした作品かなって思いました。
Posted by kimion20002000 at 2006年09月01日 03:55
>kimion20002000サマ
こちらこそ、TBありがとうございます。
この作品に関しては、私自身の嗜好の問題もありますが、純白の雪ですべてを覆い隠してしまうという意図を感じてしまい、どうにも好きになれませんでした。もちろん、こういった微妙な問題を扱うという場合には、LGFのようなインディー系の会社であっても興行成績の為に、そこそこの配慮が必要とは思います。しかしそのために、まやかしの後味(密入国のアジア人を開放する黒人ギャングも含めて)で、観了感を操作することが、果たしてこのテーマに相応しかったのか?疑問が残ります。
Posted by 森と海 at 2006年09月01日 21:05
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