「土の匂いだぁー!!」
何のことだか分からない諸兄には申し訳ありませんが、高橋悦史サイコーっていうことで(笑。
随分前には、VHSは発売されていたけれども、岡本喜八DVDBOXが2つも発売されたと言うのにいまだ日の目を見ない〈 斬る 〉 であります。
こんなに面白い映画なのに、何でDVDは発売されないでしょう?〈 佐分利満〜 〉でさえ発売されたと言うのに。・・・うーん、 きっと、最近の深く物事を考えられない多くの人の目に触れたら、パロディとかパクリと斬り捨てられるからだろうか?
その主だった原因は、ストーリーにあります。あ・え・て、あらすじは書きませんが、goo映画にはエンディングまでガッツリ書いてありますので、 どうしてもストーリーを知りたい人はリンクを辿ってください。見る前は情報管制をひくよって言う方への配慮です。
原案は山本周五郎「砦山の十七日」なんで、決して〈 用心棒 〉や〈 椿三十郎 〉の真似っこではありません(たぶん)。 むしろオリジナル脚本と言われる〈 用心棒 〉や〈 椿三十郎(コイツには山本が噛んでる) 〉の方が、山本周五郎の作品を読んで・・・ ゴホッ、ゴホッ。何も言いますまい。東宝も辛いんだろうなあ。
さて、あらすじに頼らずに書けるほど類稀なる力量は森と海にはありませんので、「面白いよ!」
ってしかいえませんけど、あえて言うならば「時代劇の振りして時代劇ではない」と申しておきましょう。
オープニングの音楽からしてギターの調べであります。「ぬっ、西部劇?」と思われる調べに、
画面はというとケセランパセランが転がってそうな砂塵舞い上がる渇いた嵐。そこにフラフラと現れる空腹の高橋悦史。
高橋悦史さんて、〈 皇帝のいない八月 〉宜しく、上から見下ろすような役柄がイメージされるんですけど、
本作ではコメディリリーフ。いや、出ずっぱりなんでコメディ完投!もちろん仲代達矢さんもすっとぼけまくっているし。
岡本作品における「能ある鷹はボケ倒す」の最たる例です。
仲代さんの役どころは、昔武士、故あって今はヤクザ。ゴタゴタあって藩政を憂う青年藩士を見守るというところ(だからぁ〜、 椿三十郎ではないんですって)。元武士あって、鋭い殺陣が見どころかといえばそうでもなく。いや一応ありますよ殺陣。しかしながら、 これ見よがしな「ココ観ろ!」的なものではありません。仲代さんが、 斬るより斬られるほうが得意ってことでは無いでしょう(爆。
一方の高橋さんは、百姓から武士に成り上がろうとする男(だからぁ〜、菊千代ではないんですって)
。だもんで、女郎屋に行けば、冒頭の通り、「土の匂いのする女」をご所望するようなんです。女郎の手の平を見て、
農作業の手と確信して喜ぶなんて・・・、もうアホです(笑。侍になりたいのに女は百姓に限る、トンでもなく捻れています。
その他出演陣も豊富で、 青年藩士グループには裏切り者で名高い中丸忠雄さんやこの頃の東宝映画で見ないことのない久保明さんや土屋嘉男さんも居ます (だからぁ〜加山雄三は出てませんて)。一方この期に乗じて藩政を牛耳ろうとする次席家老には神山繁さんが居て、 青年藩士討伐に組織された浪人の組長には岸田森さんが居ます。女郎に身を窶した岸田さんの女房のいる女郎屋があったり、 昼行灯な城代家老には東野英治郎さんが扮してたり。とにもかくにも、登場人物が多い。そのくせきっちり描き分けているんですよ、 混乱することも無く。これはもう脱帽だよ、コレだけ詰め込んで破綻しないんだから。
奥歯に物の挟まった話になりましたが、これだけは言っときましょう。レンタル屋で運良く見つけたら、CS・BSで放送があったら、 中古VHSテープがワゴンに並んでたら、・・・とりあえず見といたほうがいいと思うよー。いや、ホントに。
VHSテープは残り僅かのようですねー。
こちらはクライテリオン盤。メリケンの人のほうが幸福かもしれんて。
マスターに関しては、クライテリオン盤があるわけだし、全然問題無いと思いますよ。問題は、東宝は黒澤を一大ブランドとして売っているわけで、その他の監督に対してリソースをどれだけ割けるかってことではないでしょうか。あと市場の要求がどれだけあるかってこと。
>cardhuサマ
大菩薩峠も必見らしいですね(残念ながら未見)。これがまたクライテリオンには有るんだよなぁ。以前、Amazonのカートに入れたり出したりしまして、結局買ってない・・・(泣。