2005年03月30日

**殺人の追憶**にはビックリしたよホント

 一年も前の公開の作品で申し訳ない。

 ボクもずっとスルーしていたのだが、これは挙げないわけにはいかない、観てしまった以上。

 ちょっと前まではこんなクオリティーの作品は、日本にもあったんだ。最近は少ないけど。30台半ばの監督が、二作目にして、 これだけのモノをものにできるとは。韓国の国を挙げての文化政策は成功している。

 みんな知ってることとは思うが、この作品は(京畿道)ファソン連続殺人事件という実際の事件を取り扱っている。これもご存知の通り、 たった一人の犯人はいまだ捕まっていない。こういった場合、プライバシーを保護しつつノンフィクションとしてまとめるか、 新たな視点を加えて途中からフィクションにしてしまうかの二通りあるが、本作では概ねノンフィクションの方向だ。したがって、 事件の展開からして推理劇の匂いはない。

 単に連続殺人と命名されているが、その中身は本場アメリカも顔負けの連続猟奇殺人事件であり、被害者・ 被疑者の表現には細心の注意を要する。平たくいえばえげつないのだ。しかしながら下世話な興味本位の煽りで韓国本国で560万人を動員し、 「韓国映画ここ数年の最高傑作」とまで言わしめるはずも無く、HPでは、リアル・ サスペンスなどとうたっているもののサスペンスとまでは言いにくい(と思うのだけどどうです?)。

 

 〈殺人の追憶〉はもう一目瞭然、混沌とした時代を背景とした2つの価値のぶつかりあいだ。

 1987年、全斗煥大統領(当時)と虜泰愚による6.29民主化宣言が発表されている。 それ以前は軍事クーデターばかりの力の支配であり(全斗煥は軍事クーデターで大統領に就任しているし)、 虜泰愚も軍事クーデターの片棒担いではいたが、1988年に一応選挙で大統領就任している。なんとも混乱した時代背景だ。

 そんな時代に、都市と農村・官と民という贈つの価値がぶつかりあい、その衝突のさなかに、凶悪な事件が産み落とされている。

 韓国の人々にとって、ファソン連続殺人事件とは目をそむけることの出来ない醜悪なものであると同時に、 混沌とした政治社会さえも追憶する事件なのかもしれない。


muder  とまあ、社会派評論のフリしてみたものの、なにがすごいって2人の刑事の衝突だ。
 農村の古い体質の捜査方針を譲らないパク・トゥマンとソウルから来た近代的捜査を続けるソ・テユンという2人の刑事が、 お互いに張り合いつつも自分なりに全力を尽くして犯人を追い、一人の被疑者をおさえるに当たっては同調し、 その被疑者から自白を得れない焦燥感からかそれぞれの捜査ポリシーまで失ってしまう。あまつさえ、逆転現象まで起こしてしまう。 2人の刑事の焦り・迷い・怒りといた感情が噴出している、2人それぞれ違った形で。

 途中コメディもあるが、それを除けば全編に渡ってゴツゴツとした手触りのドラマだ。好き嫌いはあるだろうが、 ボクはこんな作品はたまらなく好きなのだ。

 

 余談だが、1986年から91年にかけて起こったこの事件、ロバート・K. レスラー言うところのセックス殺人に違いなく、 警察の追及で止められるものではない。犯人はもうこの世にいないか、この国から消えたのだろう。国境を越えてかの国に亡命していたとしても、 情報は漏れてこない。


3月31日追補
 互いに対立しあいながら、自分の捜査方針を曲げない2人が、事件に深く関わっていくにつれ、段々と同調し始め、 怒りと焦りの頂点の達するにあたって、おのおのの立ち位置が逆転してしまう。ちょうどXを描くように。
 ト書きで書けばよくあるシノプシスだと思われるだろうが、実際、観ている側を納得させるだけの説得力を得るには、粘り其い描写が不可欠。 そこには、無駄と思われるオフザケシークエンスも含まれる。と、ボクは思ったわけさ。

 
posted by 森と海 at 00:53 | Comment(0) | TrackBack(2) | Movie(他)
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殺人の追憶
Excerpt: DVD「殺人の追憶」 MEMORIES OF MURDER(2003/韓国) 韓国で実際にあった連続猟奇殺人事件を元にしたサスペンス。 謎解きミステリにするでもなく、かっこいい刑事ドラマ..
Weblog: 月影の舞
Tracked: 2005-10-19 12:26

映画「殺人の追憶」
Excerpt: 監督:ポン・ジュノ(彼の画作り、大好きです) 出演:ソン・ガンホ(やっぱいい!素晴らしい)キム・サンギョン(こちらも好演) 出演:パク・ヘイル キム・レハ ソン・ジェホ ビョン・ヒボン  ..
Weblog: おそらく見聞録
Tracked: 2009-10-03 23:16
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