2005年10月10日

**やがて空恐ろしくなる〈 ドッペルゲンガー 〉**

 ドイツ語の「ドッペル (doppel)」は、英語の「ダブル(double)」に該当し、その存在は、自分と瓜二つではあるが、 邪悪なものだという意味を含んでいる。また、自分の姿を第三者が見たように見えてしまう現象のことを言うときにも使われる。自ら自分の 「ドッペルゲンガー」現象を体験した場合には、「その者の寿命が尽きる寸前の証」という民間伝承もあり、未確認ながら、 数例あったということで、過去には恐れられていた現象でもある。

 ドッペルゲンガー/フリー百貨辞典『ウィキペディア(Wikipedia)』より

  医療機器メーカーの有能な研究者である早崎道夫(役所広司)は、人工人体の開発を続けている。しかしながら、開発は上手くいかず、 周囲の過度の期待にストレスを感じつづけていた。そんな折り、そっくりの外観を持つ分身『ドッペルゲンガー』が、早崎の前に現れた。 『ドッペルゲンガー』は、早崎に向かって言う。「オレは、おまえのしたい事をしてやるんだ」と・・・。

 表面的には、全然ホラーではありません。むしろ、やりたい放題の分身に振り回される早崎の姿は、コメディと言ってもおかしくない。 巻き込まれ型被害者コメディの典型と言っても良いでしょう。早崎ドッペルのやることはむちゃくちゃで、 黒沢清監督お得意のトンカチ殴りも出てきたりもします。そんな早崎ドッペルを、 上手く利用し始める早崎本人のクロい部分が滲み始めるころから一転してまいります。

 話は変わりますが、人には生理的にダメな人というのが少なからず存在します。それは、 見た目の不衛生さとかイヤな思いをさせられた人に似ているなどの理由も挙げられますが、心理的影響も少なくありません。人は、 対面している人に心の深層に封印している自分の許したくない部分を見出してしまうと、それだけで拒絶反応を起こしてしまいます。 心の奥底に何十にも鍵を掛けて、普段はすっかり忘れてしまっている醜悪な部分を、目の前で具現化されてしまうのですから、 それは酷く居心地の悪いものとなるのです。その目の前の人は、悪気があるわけじゃないのにね。

 本作での早崎の『ドッペルゲンガー』は、 まさしく自分の中の許しがたい部分がそのまま自分の姿となって現れるという卒倒しそうな内容です。コレはコワイ。考えるだにコワイ。 気の弱い人なら、自己が崩壊してそのままアッチの岸に旅立ってしまいそうなくらい怖い。早崎の『ドッペルゲンガー』は言います。 「おまえとおれは、やがて一つになるんだ。」と。無意識下の自分と意識下の自分が一体となるということは、超自我の範疇であるが、 残念ながら早崎は成し遂げることが出来ません。そして自らの手でその可能性を摘み取ったところで、話は終わります。その後の、 「完成した人口人体を新潟のメーカーに売り込むまでのドタバタ」は、あくまで商業映画的盛り上げを敢行しただけだと、ボクは思いましたが。

 さて、ラストで「金と女」を手にした早崎道夫は、一体どちらでしょう?

 しっかし、黒沢清監督って心の闇をほじくり返してばっかりだなあ。

 

追記 精神分析学については専門家じゃないんで、違う部分もあるかもしれない。一応、逃げ打っときます(笑。

posted by 森と海 at 21:38 | Comment(2) | TrackBack(3) | Movie(邦)
この記事へのコメント
未見なれど予告編は何故か数回みているんだよねえコレ。
でドタバタコメディっぽい雰囲気満点な予告編なれどおっしゃるとおりどこか薄ら寒い気配が・・・・。
なのでこのエントリを読んで得心いきましてござる。
Posted by tonbori at 2005年10月10日 23:48
未見なのですね。おもいっきりネタバレしなくて良かった。この映画は見る人はとっくに観てるだろうし、見てない人はどうお奨めしても見ないだろうなーという空気感がアリアリなので、ここは全部言っちゃおっかなーとも思ってました。
Posted by forestsea(主) at 2005年10月11日 21:50
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