2005年11月05日

**フランキー、走る、走る。〈 幕末太陽傳 〉**

 いつものように、「DVDでも借りようかなー。久しぶりに見てみようか、最近話題だし、あの映画は本当に魅惑だものなあ、 〈グレアム・ヤング毒殺日記 〉!(不謹慎。だが映画として不思議な魅力があるのは本当)」と、棚をグルグル探したが見つからなかった。 その勢いのままに、邦画の棚に目を移すと、ありました。

 川島雄三監督最高傑作、いや戦後最高の喜劇といってもいい〈 幕末太陽傳 〉が!!

 ボクは本来、喜劇(コメディ)の分野には懐疑的だ。時事問題や背景について言葉や行動で可笑しさを追求するもの (パロディなどはその典型)は、新鮮なうちが勝負だと思う。ネタが新しければ新しいほど可笑しい。できれば同時進行ぐらい新しい方がいい。 芸人で言えば、ひと昔前のビートたけし系。舌の上で、ネタが踊る程の美味しさ。しかし、旬を過ぎると、急速に旨みを失ってゆく。 〈華氏911 〉にしたって〈 チーム・アメリカ 〉にしたって新鮮さが勝負の分かれ目。この2つの場合は、 的である某国が一向に変わりそうにもないことが唯一の救い。

 逆に、人物の動きそのもので可笑しさを滲ませようとするもの、古きよき無声映画のきら星達がこれに当たる。老若男女・ 国籍を問わず観た人すべてに温かいものを与えてくれる。ドリフのカトちゃんの動き・芸のようだ。ほんとのこと言うと、 例えばチャップリンの作品なんて一見可笑しいのだけれど、その裏にはどす黒い持て余しそうな感情が伴っていることなどは、 大人になってわかることなのだが。それはともかく、ジックリ煮込んだ鍋物のように、少々古くたって上手いものは旨いのである。が、しかし、 新鮮さが無い分だけ、爆発的な面白みはない。じわーっとくる滋味のようなもの。

 で、〈 幕末太陽傳 〉であるが、こいつはトーキーである。が、しかし、フランキー堺の走りは、無声映画のそれである。 擬音を付けるとするならば、あの走りは「ピュ―」である。風のように、女郎屋の階段を、墓場を抜けた海岸端を文字通り「ピュ―」 と走り抜ける。上に書いたゴタクなんざ、吹っ飛ばすような「ピュ―」である。ゴタクを言うか言わぬかの間で、 「四の五の言ってる場合じゃないんでございますのよ」と、佐平次(フランキー)は駆け抜ける。しかも、走りだけじゃない、頭が切れるの、 佐平次は。あれこれゴタクを並べる輩を、口から生まれてきた異人かのように、その聡明な頭脳でうっちゃる。 物語からそうとうの距離をおいて眺めてみれば、それはまさしく隣りの狂人そのものだが、近づいちゃもうイケネーや、 輩と一緒になって土俵の外に投げ捨てられる。その転がされる感覚が、なぜか無性に心地いい。

 で、なにが言いたいかって?

 面白いの!ただし、文無しで女郎屋で遊んだ挙句の居残り稼業を理解できるのは、日本人だけだろうなあ(除く快楽亭ブラック、 落語家だし)。最低でも、付け馬の意味ぐらい理解できる人推奨。

posted by 森と海 at 00:02 | Comment(2) | TrackBack(4) | Movie(邦)
この記事へのコメント
おいらも相当前に見たきりなんだけどそんときに思ったのは陽性なのにどこか斜に見ている一種ニヒリストのような感じがあって後年川島監督の事を聞くに及んでなるほどと納得した1本。
でもそんな能書きはともかくやっぱ面白いよねえ。
Posted by tonbori at 2005年11月05日 23:25
肺病病みだったり、津軽弁の親父には形無しだったりする陰気な部分についてはHP"川島雄三傳"のほうが詳しかったりするから、あえて触れなかった(笑。
斜に構えた部分は、フランキー堺氏の地の部分と思われ。キザだったもんフランキーさん。
Posted by forestsea(主) at 2005年11月06日 01:26
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